ヒューペルジンAはトウゲシバに含まれている植物アルカロイドのひとつです。
トウゲシバは、背の高い多肉植物の外観から、Qian Ceng Ta(千層塔)と呼ばれ、「金より貴重」を意味するJin Bu Huan(金不換)として、中国では強力な鎮痛剤、あるいは腫れ、発熱、血液疾患の治療薬として知られています。ヒューペルジンAは、このトウゲシバから1980年に浙江省医学科学院と中国科学院上海薬物研究所において単離されたアルカロイド1)で、高い選択制と、可逆的で極めて強力なアセチルコリン分解酵素阻害作用が知られています。これまでのヒューペルジンAを使った多くの臨床試験が実施され、アルツハイマー型認知症と血管性認知症に対して、優れた治療効果と高い安全性を示すことが報告されています2)。これらの成果を基に、アメリカ合衆国において、ヒューペルジンAを用いた記憶支援のための健康補助食品(サプリメント)が販売されています。

  1. Kozikowski, Alan P.; Tueckmantel, Werner (1999). “Chemistry, Pharmacology, and Clinical Efficacy of the Chinese Nootropic Agent Huperzine A”. Accounts of Chemical Research 32 (8): 641–650. doi:10.1021/ar9800892.
  2.  J Neural Transm. 2009 Apr;116(4):457-65. Epub 2009 Feb 17

ヒューペルジンAの2つの薬理作用

ヒューペルジンAはアセチルコリンエステラーゼ阻害作用とNMDA受容体拮抗作用の2つの薬理作用が報告されています。

アルツハイマー病では,アセチルコリンと呼ばれる神経伝達物質を放出するシナプスの働きが落ちてきます。シナプス間隙には,出てきたアセチルコリンを分解する酵素である「アセチルコリンエステラーゼ」が待ち構えています。アルツハイマー病では放出されるアセチルコリンが少なくなっていますので,分解されてしまうと,神経伝達物質がアセチルコリンの受容体に届く前に一掃され,信号が伝わらなくなってしまいます。
ヒューペルジンAは、アセチルコリンを分解する酵素(アセチルコリンエステラーゼ)を阻害する働きがあります。

グルタミン酸は記憶や学習の際に神経終末から放出され、シナプス後膜の受容体に結合することで、神経細胞内にカルシウムを流入させ、神経を興奮させて記憶や学習に働くとされています。アルツハイマー病では、グルタミン酸が過剰に放出されることで、カルシウムが神経細胞内に過剰に入り込み、神経細胞を傷害します。
ヒューペルジンAは過剰なNMDA受容体の刺激を抑えることで神経細胞死や記憶・学習効果の低下を改善する効果が期待されています。

ヒューペルジンの有効量と安全性

ヒューペルジンAは、ドネペジル(アリセプト)等の認知症治療を目的とした場合の有効量は、アルツハイマー病に対するヒューペルジンAのプラセボに対する臨床効果と安全性に関するメタ・解析から、400µg/日であるとされています。これはMMSE (Mini-Mental State Examination=認知機能検査)とADL(Activities of Daily Living scale=日常生活動作)を主要項目として測定した結果、8~24週の300~500 μgの経口投与で、MMSE とADL の有意な改善が認められたことにあります。

認知症での治療目的の有効量を使用する場合は医師の指導のもとに行われることが必須であるため、認知症予防を目的としている「メモリン®」は、10分の1の26µg(2カプセル/日)と安全性に配慮した配合量になっています。

ヒューペルジンAの詳しい薬理作用と臨床効果についてはこちらから

ヒューペルジンの薬理作用と臨床効果

 

消化管と脳の関係

人の脳はストレスを感じると、脳の視床下部が反応し自律神経系が刺激を受け、交感神経系や副交感神経系が興奮します。交感神経系の興奮は、ノルアドレナリンやアドレナリンの分泌を促進させ、血圧上昇、心拍数増加、瞳孔拡大、発汗、筋力増強、痛覚遮断などの身体反応と共に、脳を強く覚醒させ、集中力や攻撃性の増加、精神の高揚を引き起こします。

セロトニンは、ストレスによって交感神経系が過度に興奮するのを防ぎ、適度な興奮状態を保つ働きがあるほか、生体リズム・神経内分泌・睡眠・体温調節などに関与しており、リラックス状態で増えるとされています。
セロトニンは、脳内物質として有名ですが、中枢神経系にはわずか2%しか存在せず、殆ど(90%)は消化管に存在しています。
セロトニンの主たる合成部位である消化管では、その分泌、受容体への結合、さらには機能発現にいたるまでのメカニズムが、近年詳細に解明されつつあります。

このようにセロトニンを取り巻く環境は、中枢から末梢の種々の臓器機能制御にも繋がり、脳と腸の相関性が見られることにより、機能性デイスペプシアとの関連性が推察されています。
昔から精神的に不安定になって腹痛を訴えるのも、脳内セロトニン神経系も関与している可能性があると言われており、消化機能、特に腸内環境を整えることは、脳機能の安定にもつながることが注目されています。

メモリンとうつに関する詳しい説明は

「メモリンとうつ」(もっと知りたいメモリン)

 

 

ヒューペルジンAと消化管の機能への期待

メモリンに配合されているヒューペルジンAは、薬理作用のひとつであるアセチルコリンエステラーゼ阻害作用により、消化管の機能改善が期待できます。

胃腸の運動は、副交感神経を亢進させるアセチルコリンという神経伝達物質の働きで活発になります。ヒューペルジンAは、アセチルコリン分解酵素のアセチルコリンエステラーゼを阻害し、アセチルコリンの量を増やします。その結果として、副交感神経の刺激が強まり、胃の運動が活発になるのです。

高齢者では、食欲がない、おなかが張るなどと訴えて医療機関に受診するケースが増えています。このような場合、潰瘍やガンなどの病気がなければ「機能性胃腸症(機能性ディスペプシア)」と殆どは診断されるようです。これは食物を摂取した直後の胃壁の反応が鈍くなり(電気活動低下)胃の蠕動運動や収縮力の低下が起こり、胃の内容物(食べたもの)を小腸へ送るのに時間(排出時間)がかかるための症状です。

機能性ディスペプシアが発症する明確な原因は、はっきりとは解明されていませんが、「ストレス」がきっかけとなって症状が現れることが多いといわれています。そのほかに、「ピロリ菌の感染」「食事など生活習慣の乱れ」「胃酸の刺激」などが関わっていると考えられています。

機能性ディスペプシアって?

機能性ディスペプシアは、従来の慢性胃炎にふくまれる病気です。胃粘膜に荒れやキズがないのに、胃もたれ(食事後に食べ物が胃の中で留まっている感じ)、早期飽満感(食事してすぐに満腹になってしまう)、心窩部痛(しんかぶ・みぞおちのあたりが痛い)、心窩部灼熱感(みぞおちのあたりに熱感がある)といった症状があらわれるとされています。

このように、機能性ディスペプシアは胃の不快感を伴う病気です。食物が胃に入ったとき、胃の上部を膨らませることによって一気に食物が腸へ流れないようになっています。これを適応性弛緩といいます。ただ、適応性弛緩が不十分であると、膨満感などを覚えるようになります。

また、ストレスやピロリ菌への感染、自律神経失調症、遺伝的要素などさまざまなことが原因になり、機能性ディスペプシアを発症するようになります。

 

ヒューペルジンAの安全性

ヒューペルジンAは認知症治療目的の場合は、高用量で使用されるが、同成分 のメタ解析で再検討した4つの臨床試験で副作用研究において300µg以下では副作用の報告がありません。

メモリンに使用しているヒューペルジンAは消化管機能の改善目的での有効量として26µgを配合しており、安全量のさらに10分の1としているため、非常に安全性の高い設定であるといえます。

<ヒューペルジンAのメタ解析における副作用研究>

ヒューペルジンAを1日300µg投与以下では副作用の報告はありません。
※メモリン26µg(2カプセル)/日 (安全域の上限量の10分の1以下)

ヒューペルジン A の副作用はメタ解析に採用した4つの臨床試験においてヒューペルジンAを服用した474例のAD患者では、全身症状、血液パラメーターを含む臨床検査値、心電図、循環器系パラメーターに有意な影響を及ぼさなかった。
多くの副作用は軽度で服用を継続しても問題はなかった。見られた副作用の大部分は、末梢性のコリン様作用に起因するもので、重篤なものはなく、吐気、嘔吐、下痢、(食欲不振)などで、発生頻度はプラセボグループに比較して多かったが有意差はなかった。また、非コリン性の副作用は、Hup.A服用によるものではなかった。
Wang BS, Wang H, Wei ZH, Song YY, Zhang L, Chen HZ. J Neural Transm. 2009 Apr;116(4):457-465. 
Ma, X.; Tan, C.; Zhu, D.; Gang, D.R.; Xiao, P. : J Ethnopharmacol 2007, 113(1): 15

メタ解析(メタアナリシス)とは

複数の研究の結果を統合し、より高い見地から分析すること、またはそのための手法や統計解析のことである。ランダム化比較試験(RCT)のメタアナリシスは、根拠に基づく医療において、最も質の高い根拠とされる。

メタアナリシスという言葉は、情報の収集から吟味解析までのシステマティック・レビューと同様に用いられることがある。厳密に区別する場合、メタアナリシスはデータ解析の部分を指す。(Wikipedea抜粋)