メモリンを服用した軽度認知障害(MCI)の検討

田平武先生(順天堂大学大学院、くどうちあき脳神経外科クリニック、河村病院)が行っている軽度認知障害へのメモリンの有用性について、研究会やセミナーなどで報告されています。

実施内容:
医療機関のもの忘れ外来で軽度認知障害(MCI)と診断した37例(男8例、女29例、年齢71.6±10.23)
MMSE(ミニメンタルステート検査) 26.67±2.79,ADAS-Jcog(アルツハイマー病評価尺度) 5.96±2.7<内容>
メモリンⓇ 2粒/日服用し、服用前後のADAS-Jcogおよび血液生化学検査を継時的に行なう

結果:
服用後12-18週の初期評価でADAS-Jcog(アルツハイマー病評価尺度)が1点以上悪化した症例が4例で、うち3例はアルツハイマー病に移行した。メモリンを服用した人の認知機能は大部分で改善した。(図1)

アルツハイマー病に移行した人を除くと、一例のみ悪化、15例は不変、21例は改善した。(図2)

服用後の認知機能は服用前に比し有意に改善した(p=0.014).(図3)

(田平武,日本早期認知症学会誌,第10巻,第1号、26-34,2017)

 

MMSEとは

MMSEとは、Mini Mental State Examination(ミニメンタルステート検査)の略で、米国のフォルスタイン夫妻が1975年に考案した知能検査で、国際的に最も広く使用されている認知症スクリーニング検査です。30点満点の11の質問からなり、見当識、記憶力、計算力、言語的能力、図形的能力などをカバーし、24点以上で正常と判断、10点未満では高度な知能低下、20点未満では中等度の知能低下と診断するとされています。

日本では、国際プロジェクト「アルツハイマー病神経画像戦略」(J-ADNI)が始まり、原版(2001 年改訂版)に忠実な日本語訳で、原版と等価性の高い日本版
の使用が要請される中で MMSEJ(翻訳・翻案,杉下守弘,2006)が採用されました。

実際の評価シートはこちら→MMSE評価シート

このほかに認知症の診断に用いられるものとして、MMSEと似た検査方法の一つに、聖マリアンナ医科大学の名誉教授の長谷川和夫先生が考案した『長谷川式簡易知能評価スケール』がありますが、この知能評価スケールは質問項目がMMSEよりも2問ほど少なく、図形問題などがありません。

ADAS-Jcogとは

ADAS-Jcog(Alzheimer’s Disease Assessment Scale-cognitive component-Japanese version)

認知症に薬物をはじめとする種々の治療法が行われた場合、その治療効果を測定するテストとして最もよく使用されるのが ADAS-COG で、症状の重症度をみたり、症状が重度になったか軽度になったかという症状の変化を見るために使用されることが多く、 ADAS-Jcog はその日本版です。
内容は、①単語再生、②口頭言語能力、③言語の聴覚的理解、④自発話における 喚語困難、⑤口頭命令に従う、⑥手指および物品呼称、⑦構成行為、⑧観念運動、⑨見当識、⑩単語再認および⑪テスト教示の再生能力という 11 の項目により評価されます。検査の結果は、0 点~70 点に点数化され、継続的に複数回実施し、得点の変化によって認知機能の変化を評価するものです。

このテストがよく使用される理由は、二回以上検査すると学習効果が認められやすい記憶課題について、6 つの代替課題が用意されており、6 回まで繰り返して検査できるようになっているからだとされています。

良い認知症テストが作成されても、検査をする人が正しく検査し、検査結果を正しく解釈しなければ、検査結果の意味がなくなってしまうため、認知症テストを施行する人の質を確保するための資格認定が行われています。(日本老年医学会雑誌 48巻 5 号(2011:9))

臨床試験の種類とエビデンスレベル

EBM (evidence-based medicine)ではエビデンスを作り出す研究の手法(デザイン)に優劣があるとされています。エビデンスの階層化によって臨床決断を導かれると仮定することEBMの基本原則のひとつとされています。(Guyatt G, et al. Users’ Guides to the Medical Literature. McGraw-Hill Professional. p860(2008))。このエビデンスに基づく医療として日本では『診療ガイドライン作成の手引き2007』が公開されています。

また、研究には「偏り(バイアス)」があり、どれだけ「偏り」を減らすように研究が行われているか、という視点から、「科学的根拠」を8つにランク付けされています。

 

オープン試験と二重盲検試験

オープン試験とは、被験者にどの試験治療が割付けられたか医師、スタッフ全員および被験者本人に知られている試験のことで、 オープンスタディ(Open Study)、オープントライアル(Open Trial) と呼ばれることもあります。

オープン試験は、医師が被験者への内容を知ってしまうことで、意識的にあるいは無意識に評価にバイアスが入ること、被験者自身が治療内容を知ってしまう場合にも評価にバイアスが入ることがあります。

二重盲検試験は、被験者だけでなく医師にもどちらが、薬効のある「披検薬」でどちらが、薬効の無い「プラセボ」であるか、 わからないようにして、治験を進める方法で、ダブルブラインドテスト(DBT:Double Blind Test)とも呼ばれています。プラセボ対象群を設定したランダム比較試験(RCT)では、二重盲検試験が最適な方法であるとされています。